連載きずな
産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。
事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。
平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。
これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。
平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。
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2013年11月20日
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【きずな「三恵園」日記】母の想い(下)
今秋。10月4日午前10時、池田市中川原町の障害者支援施設「三恵園」。永島由美子さん(70)は、福祉職をめざす実習生(大学生)2人を前に話を始めた。重い心身障害のある娘の由紀さん(42)にふれながらの講義だった。 「福祉がねえ、...
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2013年11月06日
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【きずな「三恵園」日記】母の想い(中)
その日、医師の話はだんだん「遠く」に聞こえた。でも、診断の内容だけは、よく覚えている。1988(昭和63)年夏。京都の病院。 「小脳が未発達のまま生まれてきた。よくこんな状態で歩けましたね」 娘の由紀さん(42)は、MRI...
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2013年10月23日
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【きずな「三恵園」日記】母の想い(上)
構内から、少しだけ色づいた五月山が見える。今月14日朝、阪急池田駅(池田市)の改札口。 「喫茶店でお話を」 「いや、おうちに来て...」 永島由美子さん(70)はそう言って、自宅に連れていってくれた。道すがら、つぶやい...
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2013年10月18日
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【きずな「三恵園」日記】漢字が大好き!
「翻車魚」 「この字読める?」。障害者の生活支援をしている「なごみ苑」(能勢町)の板谷久美子管理者は、利用者の四野久子さん(62)から紙に書かれた漢字を見せられて「うーん」。首をひねった。 「マンボウや」と四野さん。少し自...
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2013年09月25日
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【きずな「三恵園」日記】中村画伯の華麗な1日
障害者支援施設・池田三恵園(池田市)で暮らす中村哲也さん(43)は急な出来事への対応が苦手。ごく身近な人以外とは会話を交わさず、表情もあまり変わらない。両親が高齢になったため4年前に入所。普段は車部品の梱包(こんぽう)作業などをして...
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2013年09月11日
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【きずな「三恵園」日記】「食べることが命」だから
きれいに完食。野菜一切れも残っていなかった。「やったね」。救護三恵園(能勢町)の栄養士、杉谷安恵さん(60)は職員と笑みを交わした。完食したのは50歳代の男性利用者。入所前は即席食品しか食べなかったといい、園の給食ではご飯以外を全く...
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2013年08月28日
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【きずな「三恵園」日記】もう子離れします
「お子さんはダウン症です。長くは生きられないかもしれない」。池田市に住む九冨京子さんは長女の由香里さんが誕生した直後、医師からこう告げられた。遺伝子異常で知能・身体機能に障害があり、抵抗力が弱く、重病にかかりやすいという。 ...
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2013年07月31日
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【きずな「三恵園」日記】心もほぐれて
静かな音楽とほのかなハーブの香りの中で女性スタッフがやさしく利用者の手をとり、ヒジから手首、指へとマッサージしていく-。救護三恵園(能勢町)で行われたエステサロン「ジュリークショップ神戸」によるハンドマッサージ。「障害のある人たちに...
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2013年07月17日
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【きずな「三恵園」日記】悩んで気づいた
人のものを盗る行為は悪いこと。分かっているのにやめられない。こんな時、どんな支援をしたらいいか-。 救護三恵園(能勢町)で暮らす尾崎里美さん(53)=仮名=は4年前に入所した。日常生活はほぼ自分ででき、性格は温厚。だが...
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2013年07月03日
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【きずな「三恵園」日記】リズムはボクの友達
タン、タタン-。アフリカの太鼓「ジェンベ」の乾いた音が強く、やさしく響く。障害者の生活介護事業所「こすもす」(池田市)の一室。「ケンさんの音楽レクリエーション」が始まった。 ケンさんは、本名を高橋建一郎さん(35)といい、家...
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2013年06月19日
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【きずな「三恵園」日記】2年ぶりに面会できた!
2年ぶりの面会だった。 第2三恵園(能勢町)で暮らす岡村日佐子さん(81)を姉の多鶴子さん(90)が訪ねてきた。多鶴子さんは前回の面会直後に脳梗塞を発症、自らが老人ホーム暮らしとなり、再会をあきらめかけていた。だからこの日「...
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2013年06月05日
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【きずな 「三恵園」日記】 ボクはエア・ドラマー
障害者の就労支援施設「ワークスペースさつき」(池田市)の昼の休憩時間。CDデッキからポップス曲が流れると、作業室内の空気がちょっと変わった。 デッキ前の丸いすに利用者の榎本孝裕さん(24)が座り、ドラムのスティックを取って曲...
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2013年05月22日
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【きずな「三恵園」日記】「障害」をなくす力
「その家の人、いまお留守ですよ。散歩に行ってはるんやないかな」 障害者施設「池田三恵園」(池田市)の芦田大地支援員が書類を届けるため同市内のケアホーム「はなみずき」を訪れた際、近所の人にいわれた。なんでもないお隣さんの一言。...
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2013年05月08日
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【きずな「三恵園」日記】成人式に出たい!
今年20歳になった平山さおりさん(仮名)にとって、成人式は大きな意味を持っていた。昨年父親を亡くし、文字通り独り立ちの年でもあったから。 しかし、さおりさんは成人式には出られなかった。対人関係が苦手のうえ、収入の手立てがない...
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2013年04月24日
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【きずな「三恵園」日記】さっちゃんの1人暮らし
さっちゃんこと永野幸子さんは64歳。小児まひの後遺症で左足が不自由だ。高校卒業後しばらく勤めたあと、不眠症で入退院を繰り返し、51歳の時、救護三恵園(能勢町)に入所。59歳の時、他の利用者と3人でグループホーム生活を始めた。 ...
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2013年04月10日
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【きずな「三恵園」日記】桜並木の下で
救護三恵園(能勢町)は豊かな自然に囲まれている。季節の鮮やかな色彩が暮らしの背景だ。春は、とりわけ園舎前の桜並木が美しい。 昨年4月、満開の桜並木の下に元職員の中村清さんが姿を見せた。平成11年園に入職し、事務や修繕などを...
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2013年03月27日
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【きずな「三恵園」日記】「働きたい!」でがんばる
働きたい、と願う障害者は多い。でも働くことは同時に社会生活でもあり、障害者はいくつかのハードルを越えなければならない。 あいさつはきちんとできるか、人の話をちゃんと聞けるか、仕事ですべき作業を理解できるか...。障害者たちは事...
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2013年03月13日
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【きずな「三恵園」日記】カメラマンの誕生
「ここを押すんやな、よしわかった」。言うが早いか、もう走り出した。 障害者の余暇支援などをしている「なごみ苑」(能勢町)の利用者らが参加した長崎・ハウステンボス1泊旅行。カメラ係を頼まれた長沢とよ子さん(64)は簡単な説明...
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2013年02月27日
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【きずな「三恵園」日記】変わった私を見て!
障害者の就労支援などをしている「たんぽぽの家」(豊能町)が町立福祉施設・豊悠プラザで運営してきた「喫茶たんぽぽ」が3月末で閉店する。プラザが閉館するためだが、担当の福本慎太郎支援員は残念でならない。開店から3年間、「たんぽぽの家」の...
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2013年02月13日
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【きずな「三恵園日記」】お雛さまがやってきた
ホールに入ると、その一角がパッと華やいでいた。緋毛氈(ひもうせん)に色とりどりの女官、随臣人形、そして、りりしく、たおやかな内裏雛(だいりびな)...。 3月3日の「桃の節句」を前に、障害者入所支援施設「第2三恵園」(能勢町)...