連載:福祉現場のマネジメントを考える 組織と人づくり

連載:組織と人づくり

働きかけの対象は?

~組織開発とはなにか1~

働きかけの対象は?
 中村氏によれば、組織開発は組織のプロセスを主に取り扱い、それに関する問題に、組織の人々が気づき、働きかけ、組織の効果性や健全性などを高めることを目的に実践する理論と手法の集合体を意味します。
 今回、明確にしたいことは、組織開発が働きかけ、変化を起こそうとしている対象は何かということです。 社会福祉やソーシャルワークが働きかけ、変化を起こそうとする対象は、個人や家族や集団の生活問題や生活上の困りごとであったり、人々が地域で生活していくうえでの地域の問題であったりしま す。つまり「生活」がポイントです。
 これに対し組織開発は、組織に関して、なかでも「組織のプロセス」を主な働きかけの対象とするのが特徴です。では組織のプロセスとは何でしょうか。それは、組織の人々の間で起こっていることであり、"how"「どのような」にかかわることを指します。具体的には、コミュニケーション、メンバーの役割と機能、問題解決と意思決定、グループの規範、リーダーシップ、グループ間の協働と競争、組織の文化や風土などです。
 組織では職位や価値観や性別や年齢など様々な点で違いのある人がかかわり影響を与えながら仕事をしますので、いろいろな齟齬やズレや違和感が生じやすい。それら人間関係にかかわる諸問題が、働きかけの対象です。
 「一人ひとりは頑張っているが、チー ムや職場がばらばらで、まとまりがない」
 「声の大きい人の意見に現場が左右される」
 「職場の風通しが悪い」
 こうした言葉が組織で多く囁かれるようになったら、それは組織プロセスの問題が組織で発生している可能性を示唆しています。

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著者プロフィール
安田美予子(やすだ・みよこ)
関西学院大学人間福祉学部教授.。これまで、保健医療や障害領域にける利用者支援をソーシャルワークに基づき研究してきた。 現在は、社会福祉施設・事業所における職場の人間関係、リーダーシップ、チームワーク、人間関係、組織文化など組織の人的プロセスを対象に組織開発や組織行動論などに基づいて、実践・研究を行っている。
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