序章 未来に向けて
プロジェクト開始のきっかけ
このプロジェクトは、わたしが三恵園管理者の宮脇さんや前管理者で現在は産新聞厚生文化事業団企画推進本部長の片山宣博さん(49)と知り合い、三恵園入居者に対する個別支援を再構築するための協力を依頼されたことに始まります。
2006(平成 18)年に開設された三恵園は法人の理念のもと、①自閉症者支援、②地域生活移行支援、③地域福祉推進という3 つを事業の柱として施設運営・経営を進め、一定の成果を収めてきました。そして開設7 年目を迎えた昨年 2013(平成 25)年度、新たに管理者となった片山さんや当時サービス管理責任者だった宮脇さんは、「3事業の基盤にあるのが1 人ひとりの三恵園入居者の個別支援であるので、基本に立ち返り現状の個別支援の方法やプロセスを見直し、社会福祉実践の方法であるソーシャルワークに基づいて再構築したい」と考えていました。
しかし、話し合いを続けるなかで、三恵園で真に必要とされていることは、福祉施設にとって、より根本的で基本的なビジョンや理念にかかわる部分であることが明らかになりました。それは、これからの三恵園について、「どんな施設にしたい・ありたいのか」、そして「どのような三恵園職員になりたい・ありたいのか」、それを「非常勤職員も含めて全職員で考える」というものでした。 組織や人の未来の共通ビジョンを関係者が一緒に描くことで、組織と働く人双方に変化を起こすことは、「組織開発」が扱うところとぴったり重なります。
今後、チームメンバーで組織開発や組織行動論などを勉強して知識や情報を共有し、三恵園の実情と照らし合わせて、具体的な内容や推進方法や到達目標を考えていきます。こうしたプロジェクトチームの動きやプロジェクト内容について、組織開発をはじめとする関連知識も踏まえて、今後、『渚の風』で紹介していきます。
【参考文献】
Barnard, C.I.(1983) The Function of Executive, Cambridge, MA: Harvard University Press.
(バーナード,C.I. 山本安次郎・田杉競・飯野春樹(1982)、『新訳 経営者の役割(新訳29版)』ダイアモンド社)
<福祉の季刊紙「渚の風」2号(2014.10.14)の記事の一部を2018年2月26日に修正・加筆して再掲>