連載:福祉現場のマネジメントを考える 組織と人づくり

連載:組織と人づくり

変革の進め方

~組織開発とはなにか3~

契約からフィードバックへ
 まずエントリーでは、コンサルタント・研究者など組織外や組織内の組織開発実践者と当事者とが出会い、何を解決・達成したいのか、話し合って明らかにします。この段階で明らかになるのは、当事者の訴えを中心とした、大まかなレベルの課題であるかもしれません。それを対象に変革に取り組むことや互いの役割、進め方等に合意します。これが契約です。そして、当事者、組織開発実践者の関係性を形成していくことも大事です。ソーシャルワークの支援過程に照らし合わせると、こられはインテーク・契約に相当します。
 次は、データ収集、データ分析、フィードバックというフェーズで、組織開発のアクションリサーチモデルの「リサーチ」に相当します。契約内容をもとに、組織開発実践者は、データ収集、データ分析、フィードバックによって、真の問題やニーズを明らかにします。データ収集は、当事者とのミーティングでのブレインストーミング、インタビュー、観察、アンケートなどで行います。データ分析では、データを整理・分類し、理論的枠組みに関連づけます。それを当事者に伝え対話するのがフィードバックです。フィードバックでは、組織プロセスの現状や問題に当事者が気づき、変革に向け取り組むエネルギーを高めるとともに、組織の真の問題やニーズを明確にすることが目指されます。ソーシャルワークに置き換えると、以上はアセスメントに相当します。

アクション計画から評価・終結へ
 そして、問題やニーズが明らかになったら、当事者と組織開発実践者は変革の目標と達成方法を決定します。これがアクション計画です。その計画をもとにアクションを実行し、一定期間の後、アクションの効果・成果の評価を行います。これらは、アクションリサーチモデルの「アクション」に相当します。
 評価によってアクション実施の効果が認められない場合、または、新たな問題やニーズが発見された場合、リサーチのいずれかの段階かアクション計画の段階に戻って、そこからプロセスを開始します。ソーシャルワークの支援プランの計画、実施、そしてモニタリングに相当します。評価によって一定の効果・成果が認められれば、終結します。ソーシャルワークの終結に当たります。

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著者プロフィール
安田美予子(やすだ・みよこ)
関西学院大学人間福祉学部教授.。これまで、保健医療や障害領域にける利用者支援をソーシャルワークに基づき研究してきた。 現在は、社会福祉施設・事業所における職場の人間関係、リーダーシップ、チームワーク、人間関係、組織文化など組織の人的プロセスを対象に組織開発や組織行動論などに基づいて、実践・研究を行っている。
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