連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】水墨画で利用者いきいき

2018年11月27日

福祉施設のレクリエーションといえば歌に運動、ゲーム、旅行が定番だが、最近はアート、学習も盛んだ。能勢町の生活介護事業所「なごみ苑」は、プロの講師を招いて水墨画教室を開いている。墨の濃淡だけで描く絵には、受講する利用者の個性があふれる。いきいきとした表情で作画活動に取り組む利用者の姿をみて、事業所では作品展も開きたいとしている。
■丁寧な指導で熱意増す
講師を務めるのは、事業所近くに住む黒川文子さん(82)。米国で個展を開いた経験を持ち、大阪・梅田などで教室を主宰したこともある。現在も兵庫県内で教えている。「この水墨画を飾ってもらえたら」と、黒川さんが自身の作品を事業所に持ち込んだのがきっかけで、教室の開講が決まった。
教室は毎月2回開かれ、1回の講座は約1時間。水墨画に必要な道具、題材となる季節の野菜や花は黒川さんが持参してくれる。受講するのは70歳代を中心とした利用者約10人。開講から半年近くが経ったが、丁寧な指導もあって作画活動に対する利用者の熱意は回数を重ねるほどに増している。
■地域に開かれた教室に
「水墨画を習ってから利用者さんは日々の生活に変化が表れました」。こう指摘するのは黒田秀子支援員。「猫背だったのが背筋を伸ばし、落ち着きが出てきた人もいます。私たちは、これを『水墨画効果』と呼んでいます」。かつては「見づらい」「聴こえにくい」が口癖だった最高齢の89歳女性は愚痴を言わなくなり、一心不乱に筆を走らせる。
「水墨画の年賀状を出したい」と話す利用者もいる。「水墨画を学んでいることを友人に知らせたい。水墨画は頭や指先を使うので認知症予防にもなる」と前向きだ。
事業所では、地域住民にも参加を呼びかけ、将来的には地域に開かれた教室にしたい考え。田村優介支援員は「地域の人と利用者さんが作品展などを通じ、交流していければうれしい。そして、地域が持っている力を引き出していきたい」と目を輝かす。
                                             (三宅統二)

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