連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】「お姉さん」から「傾聴ボランティア」に

2017年10月24日

「待ってたわぁ。昨日な、こんなことあったわ」
「なになに、どんな話?」
障害者支援施設「第2三恵園」(能勢町)で、利用者の話に耳を傾けるボランティアが誕生した。箕面市に住む望月美智子さん(72)だ。入所していた妹さんを今年亡くし、来訪の機会を失った望月さんと施設が話し合い、「傾聴ボランティア」として定期的に訪問してもらうことになった。福祉や医療の現場では、「傾聴」や「共感」「受容」が痛みをやわらげるという。利用者は、毎月の来訪を心待ちにしている。

■長年の信頼から就任
望月さんは、平成12年に入所した7歳離れた妹さんをいつも気にかけていた。入所当初から毎月の面会日には必ずといっていいほど来訪し、一緒に買い物をしたり、他の利用者とも談笑したりしていた。しかし、今年2月、妹さんが急逝した。望月さんにとっては突然の訃報だった。
告別式の際、望月さんが、こう漏らした。「これで来訪することがなくなり、さみしくなります」。居合わせた木村勝也施設長は「もしよろしければ今後も来園し、利用者さんと話をしていただけませんか」と持ちかけた。恐る恐るのお願いだったが、望月さんは二つ返事でOKした。長年の信頼関係によるものだった。

■入所者に笑顔で応じる
毎月第4日曜日の面会日。利用者から「お姉さん」と慕われてきた望月さんが姿をみせると、入所者は笑顔で迎える。入所者が話すのは日々の出来事が中心だが、話し終えた後は「心がすっきりした」「楽しそうに話を聞いてもらえた」と好評。望月さんはもっぱら「聞き役」に徹し、終始笑顔で応じる。
望月さんの存在は、職員にとっても大きい。妹さんが入所していた17年間の施設の歴史を知っているだけに、かつての話を聞くことができ、刺激になるという。「お姉さん」から「傾聴ボランティア」と立場は変わったものの、妹さんがつないでくれた望月さんと施設の交流はこれからも続く。
                                                                                                                                                              (三宅統二)

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