連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】菜園ボランティアの遺族に感謝状

2017年08月01日

「くすのきの畑で楽しく遊ばせてもらいました」。生前、こんな話をしていた障害福祉サービス事業所「くすのき学園」(池田市)の菜園ボランティアだった男性、Yさん。その遺族が事業所を訪れ、「故人がお世話になりました」とお礼の言葉を寄せた。Yさんは土作りから野菜の種まき、水やり、収穫までをリーダーとして率先して引き受け、今年、74歳の生涯を終えた。事業所では近く遺族に感謝状を贈り、Yさんの貢献に報いることにしている。

■収穫を利用者と喜ぶ
Yさんは平成15年に菜園ボランティアになった。勤務先を定年退職した60歳のときだった。以来14年間、事業所内の畑で利用者らと耕作。品質向上のため、土壌改良などにもあたった。事業所の玄関先にはYさんらが開設した野菜即売コーナーもあり、遠くから買い物に訪れる客も多い。
栽培している野菜は30種類近くになる。トマトやキャベツ、ダイコンなど四季折々の野菜を育てており、収穫時には利用者とボランティア、職員が一緒になって喜びを分かち合う。栽培が利用者の居場所づくりにもなり、販売した野菜の収益は利用者の工賃につながる。

■引き継がれる精神
Yさんは、5年前にがんを発症した。その際、「私が亡くなっても事業所が困らないように」と、知り合いに声をかけ、菜園ボランティアを4人に増やした。Yさんも治療しながら畑に顔を出し、野菜作りはとぎれることがなかった。しかし、今年2月に帰らぬ人となった。
Yさんらが丹精込めて育てた野菜は市農業祭の農産物品評会に出品され、3年連続で優秀賞に輝いた。Yさんや遺族に対し、乾由美子施設長は「新鮮で無農薬の野菜作りの仕組みや野菜を作る楽しさを教えてもらいました。遺族の陰ながらの理解にも頭が下がります。感謝の念に堪えません」。〝第二の人生″を事業所の野菜栽培に捧げたYさんの精神は、ボランティア仲間に引き継がれている。
                                     (三宅統二)

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