連載きずな
産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。
事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。
平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。
これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。
平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。
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【きずな「三恵園」日記】春を呼ぶミニコンサート
2017年03月14日
梅香る能勢の山里。その一角にある生活介護事業所「なごみ苑」(大阪府能勢町)でミニコンサートが開かれた。室内に設けたステージに立つのは、関西を中心に活動する歌手の北原たかしさん。甘い声で「北国の春」を熱唱する姿に利用者らが大きな拍手を送り、会場は一足早く春の気分に包まれた。
「歌が上手!」と最前列で聴いていた利用者が声援を送ると、「ほめていただき、うれしいです。私、歌手なんでね」と北原さんが笑顔で返し、周囲を笑わせる場面もあった。
■多様なつながりで
コンサートのきっかけを作ったのは、なごみ苑に通う利用者らが暮らすグループホームの世話人、大石幸代さん(52)だ。ホームで夜勤を担当し、子育て支援事業をする夢に向け、知人が経営する飲食店でも働き、そこで北原さんのことを知った。
北原さんは一昨年、『最後に微笑んで』(シビーミュージック)でCDデビュー。ライブハウスなどでムード歌謡を歌う一方、「多くの人に音楽の楽しさを伝えたい」とボランティアで福祉施設を訪問している。「なごみ苑にもぜひ」と大石さんが知人を通してお願いすると、快く受けてくれた。
■手作りパネルで歓迎
コンサートの話が出たのは2カ月前。利用者らは心待ちにし、準備にあたった。ステージに飾るための「北原たかしコンサート」のパネルを皆で協力して手作りした。昼食時には北原さんのCDをかけ、いつしか誰もが歌を口ずさめるようになっていた。コンサートは大いに盛り上がり、最後は「上を向いて歩こう」を皆で一緒に歌った。
「このパネルは捨てないでくださいね。また来ますから」と告げて去った北原さん。近々2枚目のCDを出す予定だ。利用者の一人は「次のコンサートが楽しみ。それまでまた、作業をがんばります」と再会を夢見て言った。
(企画推進本部 和田依子)