連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】胸張り伝えた「5年後の私」

2015年12月15日

 「きれいな洋服を着たい!」「子供と自由に会いたい!」「お母さんといっしょに暮らして、料理を作ってあげたい!」
 力強い声が会場に響きわたった。マイクを握る女性たちは、救護施設「三恵園」(能勢町)の利用者だ。年に一度、大阪市内の宴会場で開かれる「大阪救護施設合同文化事業」で、関係者約260人が見守る舞台の上に立っていた。
 同事業は府内の救護施設が合同で開催し、歌やダンスの技を競う。今年の三恵園の出し物は、歌とともに利用者らが「5年後になりたい私」を発表するもの。フリップにそれぞれの夢の絵を描いて披露した。
■胸に迫るまっすぐな言葉
 発表した10人の利用者は、それぞれ過去に生きづらさを抱え、三恵園に入所した。病気、障害、家族からの暴力。さまざまな事情がありながらも「5年後の私」を話す彼女らの言葉はまっすぐで力強く、聴く者の胸に迫った。
 今回の出し物を発案したのは、支援員の加藤幸恵さんと中村陽子さん。加藤さんは「利用者さんが目標を持てる出し物にしたかった。堂々と発表できたのは自主的な練習の成果。私たちはただきっかけを作っただけ」と、彼女らの半年間の奮闘を振り返った。
■エンパワーメント支援
 出し物が決まると、利用者らはそれぞれの思いを言葉にし、練習に励んだ。絵が得意な者は絵を描き、互いに協力するようになった。加藤さんらは相談に乗り、励まし、ただ寄り添った。利用者自身が本来持つ能力を引き出す支援を福祉の現場で「エンパワーメント」というが、その通りとなった。
 近々、3人の利用者が地域に出て自立生活をする。5年後、再出発を果たした彼女らはきっと思い描く生活を手に入れているだろう。そう確信できる舞台だった。 (企画推進本部 和田依子)

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